備品管理を紙やExcelで管理していると、データの記入ミスや重複が発生しやすいほか、データの更新やチェックに時間がかかってしまいます。業務効率化や業務の属人化を防ぐには、備品を管理できるシステムを導入する方法がありますが、導入や運用にはコストが発生するため、中小企業にとっては簡単に導入できるものではありません。
そこでおすすめしたいのが、AppSheetで備品管理・貸出アプリを作成する方法です。低コストで企業のニーズに合った業務アプリを制作できます。本記事では、AppSheetでの備品管理アプリの作成手順を解説します。加えて、備品管理が非効率な業務になりやすい理由やAppSheetでアプリを作成するメリットも紹介します。
備品管理の効率化を考える企業の経営者や担当者の方は必見です。ぜひ参考にしてください。
目次
AppSheetで備品管理アプリを作る手順
AppSheetで実際に備品管理アプリを作成する手順を紹介します。
- データベースを作成する
- もととなるアプリを生成する
- アプリの詳細を作りこむ
あくまで基本的な備品管理機能を搭載したアプリの作成手順となっており、さらに細かい設定や機能の追加も可能です。
それぞれ詳しく解説します。
データベースを作成する
AppSheetを活用したアプリ作成には、もとになるデータベースが必要です。今回は、次の3つのデータベースを用意しました。
- 備品一覧シート:備品情報を登録するシート
- 入出庫履歴シート:備品に利用状況を記録するシート
- 従業員名簿シート:従業員の名簿を登録するシート
<備品一覧シート>

<入出庫履歴シート>

<従業員名簿シート>

データベースはExcelもしくはGoogleスプレッドシートを使って作成しますが、AppSheetとの連携の良さから、Googleスプレッドシートで作成することをおすすめします。
もととなるアプリを生成する
データベースを作成したら、スプレッドシートの[ツール]▶[AppSheet]▶[アプリを作成]の順に選択します。自動的にアプリが生成され、AppSheetの編集画面に移ります。

アプリの詳細を作りこむ
もととなるアプリが生成され、AppSheetの編集画面に移った時点で、基本的な機能が搭載されたアプリとなっています。ただし、企業や事業内容などによってニーズが異なるため、より使いやすいアプリになるよう、アプリを作りこむ必要があります。
以下のような工程で、アプリの詳細を設定・作成していきましょう。
- データベースのテーブルを追加する
- 備品管理機能の詳細を設定する
- 入出庫履歴の機能を設定する
- アプリのインターフェースを修正する
- QRコードで備品番号を登録できるよう設定する
データベースのテーブルを追加する
まずは、データベースのテーブルを追加します。
今回作成したデータベースは「備品一覧」「入出庫履歴」「従業員名簿」の3つのシートから構成されています。しかし、Googleスプレッドシートからアプリを自動生成した際には、「備品一覧」のテーブルのみしか作成されていません。
そのため、「入出庫履歴」「従業員名簿」のテーブルを追加する作業を行います。
AppSheetの編集画面左側の[Data」を選択し、画面上部にある[+]ボタンを選択して、「入出庫履歴」「従業員名簿」のテーブルを追加しましょう。
備品管理機能の詳細を設定する
次に、備品管理機能の詳細を設定します。
AppSheetのテーブルには、データベースをもとにカラム(Column)が作成されており、それぞれに詳細に設定が可能です。
ここでは、「備品一覧」と「入出庫履歴」のテーブルを調整します。今回「備品一覧」は次のように調整しました。
NAME | TYPE | KEY? | LABEL? | FORMULA | SHOW? | EDITABLE? | REQUIRE? | DESCRIPTION? | SEARCH? |
_RowNumber | Number | Number of this row | |||||||
種別 | Text | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||||
備品番号 | Text | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||
備品名 | Text | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||||
備品状態 | Enum | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||||
備考 | LongText | ✓ | ✓ | ✓ | |||||
写真 | Image | ✓ | ✓ | ✓ | |||||
Related 入出庫履歴s | List | REF_ROWS("入出庫履歴", "備品番号") | ✓ | 入出庫履歴 entries that reference this entry in the 備品番号 column | ✓ |
※「INITAIL VALUE」「DISPLAY NAME」「SCAN?」「NFC?」「PⅡ?」は記載・チェック不要
また、「備品状態」をボタンで選択できるように設定します。「備品状態」カラムの左側にある[鉛筆]ボタンを選択し、次のように設定しました。

設定後は、画面右側のアプリのプレビュー(表示されていなければ画面右端にある◀ボタンを選択)の[+]ボタンを選択し、「備品状態」下部に「正常」「貸出中」「メンテナンス中」のボタンが追加されていることを確認してください。

入出庫履歴の機能を設定する
次に、入出庫履歴機能の設定に移ります。
[入出庫履歴]テーブルを選択して、次のように設定します。
NAME | TYPE | KEY? | LABEL? | FORMULA | SHOW? | EDITABLE? | REQUIRE? | INITIAL VALUE | DESCRIPTION | SEARCH? | SCAN? |
_RowNumber | Number | Number of this row | |||||||||
貸出番号 | Number | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | MAX(入出庫履歴[貸出番号])+1 | ||||
備品番号 | Ref | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | |||||
備品品名 | Enum | ✓ | ✓ | ✓ | |||||||
社員番号 | Enum | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||||||
氏名 | Enum | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||||||
用途 | Text | ✓ | ✓ | ||||||||
貸出日 | Date | ✓ | ✓ | TODAY() | ✓ | ||||||
貸出時間 | Time | ✓ | ✓ | TIMENOW() | |||||||
返却日 | Date | ✓ | ✓ | TODAY() | ✓ | ||||||
返却時間 | Time | ✓ | ✓ | TIMENOW() | |||||||
貸出状態 | Text | IF( ISNOTBLANK([返却日]), "返却済", IF( ISNOTBLANK([貸出日]), "貸出中", "予約中" ) ) | ✓ | ✓ |
※「DISPLAY NAME」「NFC?」「PⅡ?」は記載・チェック不要
なお、備品番号は[TYPE]を[Ref]に変更し、「備品テーブル」を参照するようにしています。
また、「備品品名」「社員番号」「氏名」は、それぞれドロップダウンで表示して選択できるようにしました。設定したいカラム左の[鉛筆]ボタンを選択して、[TYPE]を[Enum]に変更してから、[Add]ボタンで項目を追加し、備品品名や社員番号、氏名などを追加。最後に[Done]ボタンを押して完了です。

テーブル最下部にある「貸出状態」のカラムは、バーチャルカラムです。数式によって値が計算される仕組みで、ここでは貸出日と返却日の入力があるかないかで、「貸出状態」を算出するよう設定しています。
「貸出状態」カラムの「Formula(関数)」の項目に、次の関数を入力してください。
- IF(ISNOTBLANK([返却日]),"返却済",IF(ISNOTBLANK([貸出日]),"貸出中","予約中"))
こうすることで、返却日の入力がある場合は、ステータスが「返却済」に、貸出日の入力がある場合には「貸出中」と表示されます。
アプリのインターフェースを修正する
最後に、作成したアプリのインターフェースを変更します。AppSheetの編集画面左側にある[スマホ]ボタンを選択すると、インターフェースを修正できます。
「備品一覧」を選択して[View Type]を[card]、[Position]を[middle]、[Group aggregate]を[COUNT]に設定して、[Layout]を[list]にします。

すると、アプリのインターフェースは以下のようになります。

また、備品の写真を設定する場合は、Googleドライブに任意のフォルダを作成して、各備品の写真を格納します。今回は「備品写真」という名称のフォルダを作成して、写真を納めました。

次に、データベースのスプレッドシートの「備品一覧」シートの「写真」列に、各写真がフォルダに格納されていることを記載します。例えば、パソコン1の写真の欄には、次のように記載しました。
- 備品写真/スクリーンショット 2025-06-15 002708.png

このように、ファルダ名にスラッシュを付け、その後に保存された写真の名前を記載します。
続けて、[Data]ボタンから「備品一覧」を選択して、[写真]カラムの左側の[鉛筆]ボタンを選択してください。[Type]を[Image]に設定して、編集画面右上の[Save]ボタンを選択すれば、アプリの写真が表示されるようになります。
QRコードで備品番号を登録できるよう設定する
AppSheetでは、アプリからQRコードやバーコードをスキャンできる機能を付けられます。
今回は「備品番号」をQRコードでスキャンできるように設定します。
[Data]▶[入出庫履歴]から[備品番号]カラム左端の[鉛筆]ボタンを選択しましょう。次に表示される画面の最下部にある[Other Properties]を選択し、[Scannable]にチェックを入れて[Done]を選択します。
AppSheet編集画面右上の[SAVE]ボタンを選択、右側に表示されるプレビューを確認して、「備品番号」欄の右側にスキャン機能のマークが表示されていれば、完了です。

パソコン上では確認できませんが、スキャン対応機種のスマホからであれば、確認できます。「備品番号」に対応したQRコードを作成し、備品管理アプリからスキャナーを起動して(スキャンマークをタップ)、カメラをQRコードに向ければ、「備品番号」が入力されます。
備品管理が非効率な業務になりやすい理由とは
Excelや紙で作成した備品台帳をもとに備品管理や棚卸を行っている場合、備品の数や種類が多くなるほど、手間や時間がかかり、ミスも発生しやすくなります。それだけ、Excelや紙で備品を管理すると、デメリットが大きくなるのです。
特に、次に挙げる理由で備品管理業務は非効率になりやすいといえます。
- リアルタイムの情報を一覧化するのが難しい
- 棚卸業務に時間がかかる
- データが正しいのかわからなくなる
- 属人的な業務になりやすい
- 拠点が複数ある場合に情報が一致しなくなる
- 適切な会計処理ができない
それぞれ詳しく解説します。
リアルタイムの情報を一覧化するのが難しい
従来のExcelや紙の台帳では、リアルタイムでの情報共有は難しくなります。
誰かがファイルを更新している間は他の人が編集できず、結局は各自がコピーして使うため、どれが最新のデータなのかわからなくなる事態に陥りがちです。
これでは、ある備品が現在「貸出中」なのか「在庫あり」なのかを正確に把握できず、確認のために担当者を探したり、保管場所まで見に行ったりする無駄な時間が発生します。
AppSheetで備品管理アプリを作成すれば、Googleスプレッドシートなどの単一のデータソースに情報が集約されるため、関係者全員がいつでも最新の状況を確認できるようになります。
非効率な確認作業から解放されることは、大きなメリットといえるでしょう。
棚卸業務に時間がかかる
定期的に発生する棚卸業務は、多くの企業にとって手間のかかる業務です。
紙のリストを片手に、膨大な数の備品を一つひとつ目視で確認し、チェックを入れていく作業には、多大な時間と労力を要します。備品の数が増えれば増えるほど、数え間違いや転記ミスといったヒューマンエラーが発生するリスクも高まるでしょう。
また、データに差異が見つかれば、その原因を特定するためにさらに時間を費やすことになります。
このような非効率な棚卸から脱却するためにも、AppSheetで作成した備品管理アプリの活用が有効です。スマートフォンを片手にQRコードをスキャンするだけで照合が完了するため、作業時間を劇的に短縮し、正確性も向上させることが可能です。
データが正しいのかわからなくなる
Excelや紙の台帳による管理は、データの正確性を維持するのが難しいという課題があります。
例えば、備品の貸し出しや返却時に台帳への記入を忘れたり、入力する数値を間違えたりといった小さなミスが積み重なることで、台帳のデータと実際の備品の状況が少しずつ乖離していきます。
結果、いざ必要な時に備品が見つからなかったり、逆に在庫があるはずなのに台帳上は「ゼロ」となっていたりするなど、データそのものの信頼性が失われてしまいます。
AppSheetで備品管理アプリを作成すれば、入力規則を設定したり、選択式にしたりすることで、入力ミスを未然に防げます。信頼できるデータを維持することは、効率的な備品管理の基礎となるでしょう。
属人的な業務になりやすい
備品管理のことを、特定の担当者しか理解していないという状況は、危険な状態と言えます。
担当者だけが独自の方法でExcelファイルや紙の書類を管理していると、その人が不在の際には業務が止まってしまうほか、異動や退職が発生した場合、引き継ぎがうまくいかず、それまでの管理方法が全くわからなくなるリスクも考えられるでしょう。
備品管理の属人化は、業務の透明性を損ない、組織としての対応力を著しく低下させる要因となります。
AppSheetで備品管理アプリを作成し、誰でも直感的に操作できる統一されたルールと画面で管理を行えば、業務の標準化が実現します。
これにより、担当者の変更にも柔軟に対応できる持続可能な管理体制を構築可能です。
拠点が複数ある場合に情報が一致しなくなる
本社以外に支店や営業所、倉庫など複数の拠点を持つ企業にとって、備品管理の一元化は難易度の高い課題です。
各拠点がそれぞれ別のExcelシートや紙の台帳で備品を管理している場合、全社でどのような資産がどこにどれだけあるのかを正確に把握することはほぼ不可能でしょう。
例えば、ある拠点で不足している備品が、実は他の拠点では余っているといった資産の非効率な配置が起こります。本社が全体の状況を把握しようとしても、各拠点からデータを集めて統合する作業に多大な手間がかかるため、リアルタイムな経営判断の妨げにもなりかねません。
AppSheetで作成したアプリなら、クラウド上でデータを一元管理するため、どの拠点からでも同じ情報にアクセスし、全社の備品状況を即座に把握できるようになります。
適切な会計処理ができない
備品管理は、単に物の数を把握するだけの業務ではありません。特に、取得価額が一定以上の備品は固定資産として計上し、減価償却などの適切な会計処理を行う必要があります。
しかし、Excelや紙の台帳では、購入日や取得価額、耐用年数といった会計処理に必要なデータの管理が煩雑になりがちです。情報が不正確だったり、紛失してしまったりすると、固定資産台帳との整合性が取れなくなり、税務申告の際に問題となる可能性も否定できません。
AppSheetで備品管理アプリを作成すれば、これらの会計データを必須項目として登録する仕組みを組み込めます。経理部門はいつでも正確なデータにアクセスでき、月次決算や税務処理をスムーズに行えるようになるでしょう。
AppSheetを使って備品管理アプリを作るメリット
AppSheetを活用して備品管理アプリを作ることで、次のようなメリットがあります。
- QRコードを使って備品を管理できる
- 備品管理の最新データを可視化・集計できる
- さまざまなデバイスで備品を管理できる
- 自社のニーズに合わせてカスタマイズできる
- アプリ導入コストが安い
- アイデアを形にしやすい
- クラウド上に公開して使用できる
- さまざまなデータと連携できる
QRコードを使って備品を管理できる
AppSheetで作成する備品管理アプリの大きなメリットは、QRコードを活用した直感的な操作が実現できることです。
管理したい個々の備品にQRコードを印刷したシールを貼り付けるだけで準備できます。従業員は、備品を借りる際や返す際に、自身のスマートフォンのアプリ画面からQRコードをスキャンするだけです。
この簡単な操作によって、誰が、いつ、どの備品を利用したのかというデータが自動的に記録される仕組みを構築できます。
手書きの貸出簿への記入漏れや、担当者への口頭での報告忘れといったミスを防げるほか、棚卸の際も、現物のQRコードを読み取るだけでデータとの照合が瞬時に完了するため、作業効率が飛躍的に向上するでしょう。
備品管理の最新データを可視化・集計できる
AppSheetで備品管理アプリを作成すると、収集したデータをリアルタイムで可視化・集計が可能です。
アプリに入力されたデータは、即座にグラフや表形式のダッシュボード画面に反映されるよう設定が可能です。
例えば、「備品カテゴリ別の所持数」「部署ごとの貸出頻度」「長期間返却されていない備品の一覧」などを自動で集計し、一目で状況を把握できる画面を作成できます。
管理者は備品の稼働率や消耗品の購入タイミングなどを、データに基づいて判断できるようになります。Excelで集計表を作成する手間から解放され、より戦略的な資産管理を実現するためのインサイトを得られることは、経営にとっても大きな価値を持つでしょう。
さまざまなデバイスで備品を管理できる
AppSheetで作成したアプリは、マルチデバイスに標準で対応しています。オフィス内でのパソコン作業はもちろん、倉庫や外出先でスマートフォンやタブレットを使って備品管理ができます。
例えば、現場の担当者は手元のスマートフォンで手軽に備品の貸出登録を行い、オフィスの管理者はPCの大きな画面で全体の在庫状況を確認するといった、それぞれの業務シーンに最適化された利用が可能です。
特別な開発を行うことなく、作成したアプリが自動的にさまざまなデバイスの画面サイズに合わせて表示されるため、利用者の利便性も大きく向上します。
時間や場所を選ばずに最新のデータへアクセスできるこの柔軟性は、業務のスピードアップに直結する重要なメリットといえるでしょう。
自社のニーズに合わせてカスタマイズできる
AppSheetで作成する備品管理アプリは、自社のニーズに合わせて自由にカスタマイズできるのが大きな強みです。
例えば「管理番号」「品名」といった基本的な項目に加えて、「保管場所の棚番号」「次のメンテナンス予定日」「関連するマニュアルのリンク」など、管理したい独自のデータ項目を簡単に追加できます。
入力画面のレイアウトやボタンの配置も、使う人が直感的に操作しやすいように変更可能です。自社の業務フローに完璧にフィットした、無駄のない最適なアプリを作成できる柔軟性は、業務効率を最大化するうえで有効といえるでしょう。
一方、市販されている備品管理システムでは、自社の特殊な運用ルールに合わせることが難しかったり、不要な機能が多くて使いにくかったりすることがあります。
アプリ導入コストが安い
AppSheetを利用すれば、このコストを劇的に抑えられます。
本格的な業務アプリを外部の専門業者に開発依頼すると、数百万円以上の高額な費用がかかることも少なくありません。予算が限られる中小企業にとって、導入の大きな障壁となります。
AppSheetは、Googleのアカウントと、Googleスプレッドシートなどのもとになるデータがあれば、小規模な利用であれば無料プランからでもアプリ作成が可能です。
プログラミングの専門知識がなくても基本的なアプリは作成できるため、人件費も最小限に抑えられます。まずは小規模に試してみて、効果を実感しながら本格展開するといった柔軟な進め方ができるのも魅力です。
高いコストパフォーマンスで業務改善を実現できる点は、経営者にとって見逃せないメリットでしょう。
アイデアを形にしやすい
「こんなアプリがあったら便利なのに」という現場のアイデアを、迅速に形にできるのも、AppSheetの魅力です。
一般的に、アプリ開発には長い時間と複雑な工程が必要ですが、AppSheetを使えば、プロトタイピング(試作品の作成)が驚くほど簡単に行えます。
普段から使い慣れたGoogleスプレッドシートなどで管理したいデータ項目をまとめたテーブルを作成し、それをAppSheetに読み込ませるだけで、基本的なアプリの雛形が自動で生成されるのです。
この手軽さにより、現場担当者と管理者とで実際の画面を見ながら「ここの表示はこうしたい」「このボタンを追加しよう」といった具体的な改善の話し合いをスピーディに進められます。
アイデアをすぐに試せる点は、利用者の満足度が高く、業務で使えるアプリを作成するための鍵となるでしょう。
クラウド上に公開して使用できる
AppSheetで作成した備品管理アプリは、Googleのクラウド基盤上で動作します。自社でサーバーを用意したり、面倒なインフラ管理を行ったりする必要は一切ありません。
アプリの作成が完了したら、利用を許可したい従業員のメールアドレスを指定するだけで、簡単に共有を開始できます。利用者は招待メールのリンクをクリックするだけで、すぐに自分のスマートフォンやPCからアプリを使い始められます。
アプリのアップデートも、開発者が変更を保存すれば、全ユーザーのアプリに即座に反映されます。公開や運用の手間がほとんどかからない点は、IT専門の担当者がいない中小企業にとって、大きなメリットといえるでしょう。
さまざまなデータと連携できる
AppSheetの強みは、さまざまなデータと連携できる点にあります。
Googleスプレッドシートとの親和性の高さに加えて、SQLデータベースやSalesforce、Dropboxといったさまざまなクラウドサービスやデータソースと連携する能力を持っています。
例えば、既存の基幹システムで管理している社員データをAppSheetの備品管理アプリに連携させれば、貸出先の従業員情報を手入力することなく、社員番号で簡単に呼び出すといった高度な機能を実現可能です。
将来的に、備品管理だけでなく、勤怠管理や経費精算など、他の業務アプリを作成した場合にも、それらのデータを相互に連携させ、業務効率化を図ることもできます。
AppSheetの拡張性の高さは、企業の成長やDXの進展に合わせて、システムを進化させられる大きな可能性を秘めています。
AppSheetで備品管理アプリを作成するための4つのステップ
AppSheetで備品管理アプリを作成する場合、以下のステップを踏んで作成することになります。
- アプリの要件を定義する
- データモデルを設計する
- AppSheetでアプリを作成する
- テスト運用・フィードバック・改善を繰り返す
それぞれ詳しく解説します。
アプリの要件を定義する
AppSheetで備品管理アプリ作成の最初のステップは、アプリの要件を定義することです。
新しく作成するアプリで「何を」「どのように」管理したいのかを明確にすることで、アプリ設計図の土台を作る作業を行いましょう。
そのためには、管理対象としたい備品の種類をすべて洗い出し、それぞれの備品に対して、どのようなデータを管理する必要があるかを考えます。
「備品名」「管理番号」「保管場所」「購入日」「現在のステータス(在庫、貸出中など)」といった基本的な項目はもちろん、QRコードで管理したいのか、写真も登録したいのか、といった具体的な機能の要望もリストアップしてください。
アプリの要件定義を丁寧に行うことで、後の工程で手戻りが発生するのを防ぎ、本当に現場で役立つアプリを作成できます。
データモデルを設計する
アプリの要件が決まったら、次はその情報を格納するための「データモデル」を設計します。
これは、AppSheetがデータを読み込むためのもととなる台帳を準備するステップです。一般的には、Googleスプレッドシートを使って行います。
先ほどの要件定義で洗い出した管理項目を、スプレッドシートの1行目のヘッダー(見出し)として入力しましょう。例えば、「管理番号」「備品名」「カテゴリ」「ステータス」「利用者」「貸出日」「返却予定日」といった具体的な列(テーブルのカラム)を作成します。
なお、後でAppSheetがデータを正しく認識できるよう、各備品が一意に識別できる「キー」となる項目(管理番号など)を設けるのがポイントです。
このデータ構造が、そのままアプリのデータベースの基礎となるため、重要な工程となります。
AppSheetでアプリを作成する
データモデルの設計(Googleスプレッドシートの準備が完了)すれば、いよいよAppSheetでのアプリ作成に入ります。
まずはAppSheetの公式サイトにGoogleアカウントでログインし、「新しいアプリを作成」から「Start with existing data」を選択します。
そして、先ほど作成したGoogleスプレッドシートを指定するだけで、AppSheetがシートのテーブル構造を自動で解析し、備品データの一覧表示画面や詳細画面、データ入力用のフォーム画面などを自動的に生成してくれます。
このような手順で、アプリの原型はできあがります。
ここから、各画面の表示形式(ビュー)をカード形式やテーブル形式に変更したり、ブランドカラーを設定したりと、直感的なエディタ画面でカスタマイズを加えていくことになります。
テスト運用・フィードバック・改善を繰り返す
基本的なアプリの作成が完了したら、すぐに全社展開するのではなく、まずは小規模な範囲で「テスト運用」を行いましょう。
実際にアプリを使ってもらうことで、設計段階では気づかなかった問題点や、より便利にするための改善アイデアが見つかるからです。
「このボタンはもっと大きい方が押しやすい」「入力項目が多すぎるので減らしてほしい」といった現場の担当者からの具体的なフィードバックは、アプリの品質を向上させるための貴重なデータとなります。
AppSheetは、こうしたフィードバックをもとにした修正や機能追加を簡単に行えるのが特徴です。「テスト→フィードバック→改善」のサイクルを繰り返すことで、利用者の満足度が高い、業務に貢献する備品管理アプリへと磨き上げていくことが可能です。
AppSheetで作った備品管理アプリに搭載できる機能例
AppSheetで作成する備品管理アプリには、さまざまな機能を搭載できます。搭載可能な機能の一例は次の通りです。
- 備品データと詳細情報の登録・表示機能
- バーコードスキャン機能
- 備品の写真登録機能
- 備品状態の追跡機能
- 各種データの検索・フィルタリング機能
- データ集計・レポート作成機能
- 備品データの通知・ワークフロー機能
それぞれ詳しく解説します。
備品データと詳細情報の登録・表示機能
AppSheetで作成する備品管理アプリには、備品に関するさまざまなデータを登録し、一覧や詳細画面で表示する機能が搭載されています。
例えば、「備品名」「カテゴリ」「型番」「取得年月日」「保管場所」といったテキスト情報はもちろん、「購入金額」のような数値データも正確に管理できます。入力フォームの画面では、項目ごとに必須入力を設定したり、カテゴリをプルダウンリストから選択させたりすることで、入力ミスや表記の揺れを防止可能です。
登録されたデータは、見やすい一覧画面(テーブルビューやカードビューなど)で表示され、特定の備品をタップすれば、その詳細情報がすべて表示される画面へと遷移します。
バーコードスキャン機能
AppSheetの備品管理アプリが持つ強力な機能の一つが、スマートフォンのカメラを利用したバーコード(QRコード含む)スキャン機能です。この機能を活用すれば、備品の貸出や返却、棚卸といった作業が劇的にスピードアップします。
例えば、貸出処理の画面にスキャンボタンを設置し、利用者が備品に貼られたQRコードを読み取るだけで、その備品データが自動的に呼び出されるように設定できます。
これにより、手作業で管理番号を検索して入力する手間が一切なくなり、業務効率が飛躍的に向上するほか、棚卸の際も、現物のバーコードを次々とスキャンしていくだけで、アプリ上のデータと簡単に照合できます。
バーコードスキャン機能は、ヒューマンエラーを削減し、正確な備品管理を実現するための必須機能といえるでしょう。
備品の写真登録機能
AppSheetで作成した備品管理アプリには、備品の写真を登録する機能も搭載できます。
例えば、似たような型番の機材が複数ある場合、名称や管理番号だけでは、どの現物のことなのかを特定するのが難しいケースがあります。
そこで役立つのが、AppSheetの備品写真登録機能です。この機能を使えば、スマートフォンのカメラで撮影した備品の写真を、そのデータに直接紐づけて登録できます。
アプリでは備品を写真で確認できるため、現物との照合が簡単かつ確実に行えるほか、返却時に備品の状態(傷や破損の有無など)を写真で記録しておくことで、後のトラブルも防止できます。
文字データだけでは伝わらない視覚的な情報を管理できることは、より正確な備品管理を実現するうえで大きなメリットとなります。
備品状態の追跡機能
AppSheetを使えば、「在庫あり」「貸出中」「修理中」「廃棄待ち」といった備品の状態(ステータス)を簡単に管理する仕組みをアプリに組み込めます。
例えば、貸出処理を行うとステータスが自動的に「貸出中」に切り替わり、返却処理をすれば「在庫あり」に戻るといった挙動を設定することが可能です。ステータスごとに色分けして一覧画面に表示させれば、現在の状況が一目瞭然となります。
「貸出中」の備品がいつ返却予定なのかも合わせて表示させることで、他の利用者は利用計画を立てやすくなるでしょう。
品が現在どのような状態にあるのかをリアルタイムで追跡できる機能は、備品の遊休期間を減らし、資産の稼働率の最大化につながります。
各種データの検索・フィルタリング機能
AppSheetには、膨大なデータの中から必要な情報だけを素早く見つけ出すための、検索・フィルタリング機能が標準で備わっています。
アプリ画面の上部に検索ボックスを設置すれば、備品名や管理番号の一部を入力するだけで、該当するデータを瞬時に絞り込むことが可能です。また「カテゴリが『PC』で、かつステータスが『在庫あり』の備品だけを表示する」といった、複数の条件を組み合わせた高度なフィルタリングも設定できます。
管理する備品の数が数十、数百と増えてくると、目的のデータを探し出すのが大変になりますが、検索・フィルタリング機能により、利用者は大量のデータの中から迷うことなく、目的の備品情報にたどり着けます。
Excelのフィルター機能よりも直感的で使いやすい検索機能は、日々の業務ストレスを軽減してくれるでしょう。
データ集計・レポート作成機能
AppSheetで作成した備品管理アプリには、蓄積された備品管理データを自動で集計し、グラフやチャートを含むレポート画面を作成する機能も搭載されています。
例えば「備品カテゴリ別の割合を示す円グラフ」や、「月ごとの貸出件数の推移を示す棒グラフ」といったビジュアルなレポートを、プログラミングなしで作成できるのです。
管理者は、どの備品がよく使われているのか、あるいはあまり使われていないのかといった傾向を、データに基づいて客観的に把握できます。
分析データは、将来の備品購入計画や、不要な資産の廃棄といった経営判断を行ううえで、価値ある情報となるでしょう。手作業で集計レポートを作成する手間を省き、データドリブンな資産管理への移行を強力にサポートします。
備品データの通知・ワークフロー機能
AppSheetで作成した備品管理アプリでは、通知・ワークフロー機能を利用でき、日々の業務を効率化できます。
例えば、返却予定日を過ぎてもステータスが『貸出中』のままの備品があった場合、借りている本人と管理者の両方に注意喚起のメールを自動送信したり、高価な備品の貸出申請がされたら、承認者(上長など)にプッシュ通知を送り、アプリ上で承認・却下ができるようにしたりできます。
人間の確認や連絡といった作業を自動化することで、対応漏れを防げるため、業務プロセス全体をスムーズにできるでしょう。
AppSheetを使って備品管理アプリを作る際のポイント
AppSheetを使って備品管理アプリを作成・運用する場合、次のポイントを意識しましょう。
- セキュリティ管理・アクセス権限管理を徹底すること
- 利用者のトレーニングとサポートを行うこと
- 作成したアプリの改善とメンテナンスを継続すること
セキュリティ管理・アクセス権限管理を徹底すること
業務で利用するアプリを作成するにあたって、セキュリティの確保は重要なポイントです。
AppSheetでは、ユーザーの役割に応じて、データへのアクセス権限を細かく設定する機能が備わっており、「一般の従業員は備品の閲覧と貸出申請のみ可能」「備品管理の担当者はすべてのデータの登録・更新・削除が可能」「経営層は集計レポートの閲覧のみ可能」といった設定が可能です。
立場に応じた権限を割り当てることで、意図しないデータの改ざんや削除を防止したり、情報漏洩のリスクを低減したりできます。
特に、備品の購入金額などの機密情報を含むデータを扱う場合は、誰がその情報にアクセスできるのかを厳密に管理するテーブル設計を意識すべきです。
利用者のトレーニングとサポートを行うこと
AppSheetで備品管理アプリを制作した後に、アプリを実際に利用する従業員のトレーニングを行いましょう。
どんなに優れた備品管理アプリを作成しても、それを使う従業員が操作方法を理解していなければ、意味をなさないためです。
新しいシステムを導入する際は、利用者向けのトレーニング(説明会など)を実施し、アプリの基本的な使い方や、アプリを導入する理由や目的を丁寧に共有することが大切です。
また、導入後も「操作方法がわからない」「エラーが出てしまった」といった問い合わせに対応するためのサポート体制を整えておくことが、アプリのスムーズな定着を促します。
簡単な操作マニュアルを作成したり、質問を受け付けるチャットグループを用意したりするだけでも効果的です。利用者が安心して使える環境を整えることが、全社的な業務効率化の成功につながるでしょう。
作成したアプリの改善とメンテナンスを継続すること
AppSheetで作成した備品管理アプリは、一度完成したら終わりではありません。
ビジネスの状況や業務フローは常に変化していくため、アプリも進化させていく必要があります。
「新しい種類の備品が増えたので、管理項目を追加したい」「現場から、もっとこうした方が使いやすいという意見が出てきた」といったニーズに継続的に応えていくことが、アプリの価値を長期的に維持するためには重要です。
AppSheetでは、このような変更や機能追加が容易に行えます。定期的に利用者の声に耳を傾け、アプリの改善とメンテナンスを続けることで、常に業務に最適化された状態を保てるでしょう。
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AppSheetで備品管理アプリを作成して業務を効率化しよう!
AppSheetを活用すれば、自社の業務プロセスを効率化できる備品管理アプリを作成できます。AppSheetならノーコードで備品管理アプリを作成できるため、デジタル化やDX推進を内製化させたい場合にもおすすめです。
本記事を参考にAppSheetで自社に合った備品管理アプリを作成してみてください。
また、AppSheetでの備品管理アプリの作成が難しい場合や、信頼できる相談先に業務効率化を託したい場合は、フミダスDXにご相談ください。企業ごとの課題を解決するシステム・ツールの開発で、企業の業務効率化をサポートいたします。
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投稿者プロフィール

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株式会社真工社 DX推進室 課長
工程設計や新規品の立ち上げ、海外工場への技術支援、製造責任者を経て、DX推進室の立ち上げに参画。DX推進室の責任者として社内外のDX支援に取り組む。
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